中村拓磨 × Takuma Nakamura

へぼパイロット奮闘記.いいね!いい人生だよ!

社会に愛されて生きる

| 40 Comments

アメリカに帰ってきてから3ヶ月が経った.これが3回目の長期滞在だが,南部は初めてということもあり色々と発見が多い.デトロイド,シカゴに次いで全米で3番目に治安が悪いと言われるアトランタだが,キャンパスの付近に居る限りは至って平和だ.今学期は授業,研究に忙しくてほとんど出歩けていないが,冬休みは少し観光をしようかと思っているので街の様子は年明けにでも書くことにしよう.まだ「アトランタとはこういうものだ!」「アメリカの大学院とはこういうものだ!」と偉そうに書けるほど経験してないので,今回のブログは最初の3ヶ月の生活の様子と感想を中心に書こうかと.

普段は大抵研究室と家の往復で終わる.たまに近所の空港に飛行機の操縦をしに出かけ,ラジコンを公園に飛ばしに行き,ジムに泳ぎに行く.アトランタは夜景が奇麗だし,公園は十分な広さがあって芝生なのでラジコンを飛ばすにはいい環境.ジムのプールはアトランタオリンピックで使われたかなりいいプール.そんなわけで,学部のころに比べると単調な生活ではあるが満足している.

セスナ172からのダウンタウン


ジムのプール

キャンパスの空撮,フルパワーだぜぇ,信じらんねぇ!(音量注意)

僕はUAV Research Facilityという研究室で無人航空機の研究をしている.この3ヶ月はUAVの経路設計に必要なモデルを作っていた.先週のミーティングでそこそこまとまった成果を報告して,そこそこ満足してもらえたかと思う.研究室をクビになることはなさそうだ.ちなみにNickという学部生が教授に雇われて(と言っても学部生は基本的にお金をもらうのではなく単位をもらうのだが)僕の下で働いてくれている.僕の作ったシミュレーションでせっせとパラメータを変えてデータを取ってきてくれる.ざっくりいうと雑用である.Nickと僕は同い年だが学部生とPh.Dの扱いの差は,アメリカでは日本以上に大きい気もする.逆にマスターと学部生の壁が薄い感じだろうか.まぁ学部生は基本的にデスクもないし,研究室の鍵ももらえないし,研究室のネットワークも使えないからできることが限られるのは仕方がないが.

なおうちの研究室のボスは,同じく航空宇宙工学の教授と結婚している.夫婦共に教授で同じ研究分野.おまけに共にMITの卒業生だ.僕は子供のころによく両親がアホすぎて呆れたものだが,両親が共にMITの卒業生でGeorgia Techの教授とかそれはそれで嫌な気もする,などとふと思った.写真はthanksgivingで教授宅にディナーに呼ばれたときのもの.写真で見るよりかなり迫力のあるターキーだった.

研究室はだいたい予想通りの環境である.日本に居た時の研究室と比べれば人間関係は少しドライではあるが,ラボメイトのDefense (最終審査) が終わったり,自分の国に帰るなどと言った時は近くのバーに歩いて行って軽く飲む.アメリカの研究室は基本的には雇用なので,成果が出せないとクビになる.どの研究室はよく追い出されるとか,この研究室は忙しすぎる,などと言ったことがまとめられた掲示板が作られて研究室を探している学部生やマスターの学生がよく質問している.僕も数週間前に掲示板に招待されて一応登録してある.探す側には回りたくないものだ.

こちらでPh.Dの学生をはじめてうっすらと感じるのは,Ph.Dの学生でいることが意外と快適な点だろうか.キャンパスの中はもちろん,友人とパーティに行っても銀行にアカウントを作りに行っても,なーんとなく会話から尊敬してもらってる感じがすること.ジョージア工科大の航空宇宙工学ということもあるんだろうが.”It’s rocket science” (理解が難しいもの)という英語の表現もあるぐらいなので,航空宇宙とはこちらの人にとって訳の分からないもの,という理解なのだろう.なにはともあれ尊敬してもらって悪い気はしない.

日本の博士に行っていたらどうだっただろう?とふと思う.日本で博士課程の学生をやっていた訳ではないので正確な比較はできない.しかし,日本の友人に「博士課程に進学するんだ!」と報告して回った時の反応と,先輩達の話から僕が感じるのは,日本の博士課程に進学していても,周りからの評価という点ではここまで快適ではなかったかなと思う.就職に失敗した人の受け皿として使われているだとか,親のスネかじって10年も大学生やってるだとか,印象がよくないことを多く聞くのは僕だけじゃないんじゃないかな.博士が100人いる村という動画が少し前にはやったが,ここまで悪意に溢れていないにしても世間で言う博士って多少似た評価なんじゃないだろうか.

日本でもアメリカでも,博士の学生がやってることは同等に意義があり,誰でもやれることではないと思うのだが.どうせ同じぐらい苦労して生きていくなら,世間から尊敬されて生きていたいものだ,と思った.ただ一方で,教授や医者や良い大学,に対する尊敬や憧れというのは日本に居た時の方が強く感じる.世界ランク27位,54位の東大,京大が,Top universities by reputation (世評,名声のランク) ではそれぞれ世界9位,23位まで上がってくるところからしても,日本ってのは高学歴に対する尊敬はかなり強い社会なんじゃないかと思うんだけどな.なんで博士が尊敬されない社会なんだろうね.

アメリカは日本以上の学歴社会だと言われるが,今のところまだそこまで違いは伝わってはこない.ただ,会社の上位層や軍のお偉いさんがやたらとPh.D持ってるのは少し日本人としては違和感かな?僕の印象だと日本の会社ってのは学部卒の東大や早稲田や慶応の文系の人らが率いてるイメージだったから.それも含めてPh.Dが多方面で評価される文化なのだろうか.博士の学生でいる快適さはこの辺りの評価からくるものかもしれない.

話は少しそれるが,博士課程の評価に加えて,似たような感想をもったのが「ゆとり」と「英語」だ.なんとなく失敗作扱いのゆとり世代.平均的に馬鹿になったのは事実だろうし,平均的にやる気と気合いが足りないのも感じるが,当然やる気に満ちあふれた優秀な人はいる.英語に対しても同様の感想を持ったのは「理系は英語が出来ない,文系は数学ができない」といったことをよく聞いてここまで育ってきたのを思い出したからだ.大抵の文系の人間より英語が出来た僕にとって「理系だから英語できないんでしょ?」と言われることは不愉快以外のなにものでもなかったが,数学のできる文系も同様に不愉快だったのだろう.

社会からどう思われようが自分の人生なので,大切なものの最終的な決断に効いてくることは稀だろう.四六時中バットを振って甲子園に行くことを夢見てる高校球児が,野球をやってるとお尻が大きくなってスタイリッシュなパンツが履けなくなってダサいよ,と言われて野球をやめるだろうか.僕にとって,博士課程は就職が厳しいだの,給料が低いだの,競争が激しいだのと,多少の誇張と悪意を込めて周りに言われてきたことは,タイトなジーンズに体をねじ込めなくなる程度のことであった.周りがどう思おうが自分の目標を達成するために博士が必要なら行くしかないと.

日本の博士課程にも優秀な友人や先輩を多く知っている.共にアメリカの大学院への留学を目指した友人達や,東北大で所属していた研究室の先輩達は,特に優秀な人たちであった.研究で成果をあげ,厳しい倍率の研究費を勝ち取って,自分で生計を立てていた.彼らにとっては的外れな,社会からの評価はどう映るのだろうか.

ゆとりだから馬鹿だとか努力しないだとか優秀な努力家に向かって堂々と言う人の気が知れない.「博士課程に行くなんて親が金持ちでいいね」なんて言われると,倍率の高い入学試験をパスして厳しい審査を通って給料をもらって生活するPh.D候補生は「まぁ俺は違うけどね」と言いたいところだろう.なぜ理系だからということで,文系だからということで,英語ができない,数学ができないとレッテルを貼られなきゃいけないのか.正統な評価をしてもらえる場所へ行きたいと思うのは至って普通の考えな気がする.

僕がアメリカを目指したのは前回のアメリカの大学院へ行くに書いたような動機からだ.アメリカに憧れ,航空宇宙工学に夢描いてここまで辿り着いた.ただ,ひねくれものの僕は,なんとなく日本の博士に対する評価とか,自分の世代に対する評価とか,英語話せないんだろ?とかいう声が気に入らなくて,多少反発する気分で日本から離れたのかもしれない.他人が用意した名刺を配って生きていく訳でもないし,タイトなジーンズが履けなければそれでもいいのだが,社会からも認められて生きていけるなら,その方が満足だろう.みんな社会に愛されて生きていたいものだと思う.

そんなことをたまに考えたりする南部での3ヶ月であった.これからも新しい発見をすることに胸を膨らませている.

40 Comments

  1. 感動した!!
    凄い!!!
    俺は今高校生だけど自分の夢を実現できる大学大学にはいれるように努力してきます。ありがとう

    • コメントありがとうございます.今回は若干愚痴っぽいですが,感動してくれる人もいて嬉しいです.

  2. 自らの夢に向かって絶えず前進し続けるその姿は素晴らしい。
    あなたのような人物の姿を見るといつまでも腐ったまま他人を羨む私のこの気持ちも偽物なのかもしれないと思ってしまう。
    これからも、頑張ってください。応援しています。

    • コメントありがとうございます.絶えず前進はしてないですね,多分.よく不安になったり,ゴールを見失ってふらふらしてる気がします.ただ,道に迷って1周まわって,もう1回前に向かって飛び出すぐらいでもいいかな,とも思います.諦めなければ,それでも意外と遠くまで飛べるもんですから.

  3. 宇宙工学に憧れる高校生です
    琢磨さんのその姿勢とても尊敬しています
    このブログを見ていると自分ももっと頑張りたいという気持ちが出てきて元気がもらえます
    応援してます、頑張ってください

  4. 中村さんのおかげで再び自分の夢を確認することが出来ました。ありがとうございます。

  5. 貴方はこれからの世の中を変える人達の1人となると私は信じています。私も今その1人になるため力を蓄えています。
    歴史からも分かるように何時だって世の中の一般解釈というのは2次ソースの情報などにより都合の良いようになってしまうものです。
    それにより肩身の狭い思いをする事もあると思いますが流されず自分だけを信じて諦めないで下さい。あなたなら必ず出来ると思います。お互い夢を叶えましょう。

    • 世界変えますよ!肩身狭いんですかね?確かにウィンドノーツの中村拓磨が坂道で自転車ひくわけにはいかないと思ってゼイゼイ言いながらダンシングしてるんで狭いですかね.

  6. 自分も中村さんと同い年です。
    留学行ったり色んなことしたけど特に何にも興味持てなくて目標もないので、
    夢があり、それに向かってる中村さんが羨ましいです。
    これからもブログ読ませてもらいます!

  7. 読ませていただきました。
    私は物理学部生ですが、あなたの考えと実現力は素晴らしいと思いました。私も物理学で食べて行きたいと志す人間ですが、どうしても将来の不安が頭から離れません。私はあなたのように優秀な大学に所属しているわけではなく、家が裕福なわけでもありません。どうしたらあなたのように、海外にいこうと決め、脇目も振らずひた走ることができるのですか。どうしたら気持ちが保てるのですか。こんなことを聞いたり、将来の不安を感じている時点でこの道に合っていないのは薄々感じてはいます。しかし、並の人生で終わりたくないという気持ちはあります。こんなゆとり大学生に、お叱りの言葉をいただけませんか…

    • コメントありがとうございます.なんとかなるだろうと思ってと飛び込んで来れたのは多少運もあるかと思います.好きで飛び込んだ分野が比較的留学しやすく,予算のつきやすい分野だったので.

  8. もうちょっと写真載せてくれよ
    アメリカの写真が見たいんだよ

    • コメントありがとうございます.写真ですか,そういう点でブログに来てくれる人もいるんですね.頑張ってみます.

  9. 自分は春から大学院生です。
    影ながら応援してます!

  10. 衝撃!
    衝撃を受けました!!

    さっき、鳥人間コンテストから、中村拓磨という人物にたどりついたんですが、

    かっけぇ!!!

    ブログとか見てきました!
    こんなに純粋に 『かっこいい』と思ったのは久しぶりです!!!

    今夜は寝れそうありません!

    なんだか僕もワクワクしてきました!
    よくわからないけどワクワクしてきた!!!!

    どうやったらそんなにかっこよく、ワクワクと生きられるんですか?!

    18歳、男です!

    本気で憧れます!!!!!

    • 僕もこんなに「かっこいい」と言われたのは久しぶりです(笑)ありがとうございます.

      永遠の14歳がポリシーです.

  11. 昨日は結局一睡もしませんでした (笑)

    しばらく『永遠の14歳』という言葉が離れそうにないです…(( ゜o゜))

    是非二十歳までには会って話をきいてみたいです!

  12. 鳥人間コンテストから来ました
    今時では珍しいぐらいに熱くてカッコイイ男なんですね
    自分も色々とやりたいことがあるので見習いたいと思います

  13. とある機械系の大学院で研究をしている者です.
    自分がしている研究についてだとか,
    これから働く自動車会社の事だとか,
    いろいろ守りに入った考えになったり,
    エンジニアってモテないんじゃないかとか考えてみたり笑

    そんなときふとこの文章を読んで,アツい気分を取り戻せました.
    Takuma君とは同年代,ゆとり世代ですけど,
    こんなパッション持った同期がいると思うと何だか嬉しくなってきました!

    これから自分自身も,日本もアツくなれるように頑張りましょう!

    • 丁寧なコメントありがとうございます.エンジニアってかっこいいと思いますよ?別に守りに入った考えばかりではないと思うのですが.これからも熱くがんばりましょう!

  14. 8/6大阪府立での講演会に行きそびれたのが本気で悔しくてついまた書き込んでしまいました笑
    大阪……行けたはずなんですが……。知りませんでした……。

    ゆとりが終わって1年目の新課程世代ですが、相変わらず、やる気と学力は低迷したままのような……。
    今後のアベデュケーションとやらに期待です。留学への支援も増加するようですし。

    これからもそんな日本に届くような、アツいニュースをお待ちしています!

  15. 初めまして

    グラフィックデザインを勉強しているものです。

    鳥人間コンテストの動画を拝見し、余りにも感動したので思わずコメントしております。

    全くジャンルは違いますが、夢に向かって熱く燃えている姿に勇気づけられました。本当に格好いいです。

    私も、もっともっと、やれることがある気がしてきました。

    ぴったり同世代として、
    これからも密かに応援させていただきます!

    • コメントありがとうございます.
      鳥人間の時期になると多くの人がブログにコメントしてくれたりメールしてくれたりしてとても嬉しいです.これからも頑張ります

  16. 新しいブログの投稿、楽しみにお待ちしております。

  17. 初めまして。
    東北大学を志望している受験生です。

    中村さんが鳥人間コンテストの後、アメリカに留学し、パイロットの免許を取り、そして現在はアメリカの大学院に行っておられると先日知って、衝撃を受けました。
    まさしく、自分の思い描いていたような生き方を体現した方であったからです。
    自分も幼い頃から空に憧れ、航空の研究をしたいと思い続けてきました。中村さんのような生き方を目指し、努力したいと思います。

    もし東北大学に合格したら、憧れだったウインドノーツに入りたいと思っています。
    何かの折りでお会いできたら光栄です。
    中村さんは自分の生き方に、大きな指針を与えてくださいました。
    頑張って自分の生き方を貫いてください!
    自分も頑張ります!

    • コメントありがとうございます.僕も鳥人間とアメリカ留学は高校のころから,あるいはもっと前からやりたいと思ってました.是非頑張って下さい.

  18. 鳥人間コンテストがあるたびに、あなたを思い出します。七夕みたいw。
    そういう人日本に何十人、何百人っているんだろうな。
    そんな人生を送っているあなたが、少しいや、結構羨ましい。
    これからも頑張って下さい。

  19. お早うございます.
    ブログは読みました

    久しぶりに見て胸のあたりがどくっとなる人間を見つけました.笑
    久しぶり過ぎてコメントしたくなりました.
    宇宙飛行士になるのはこういう人か…!という感じですね.
    勿論イメージとして,ですが.

    私は文系ですので,違う世界に行くということはすなわち世界の解釈を変えるということであり,精神的な行為になります.
    勿論物理的に宇宙も深海も行きたいですが笑
    中々難しいので,このブログを読んで楽しんでおります笑
    時間があれば、また是非更新して下さいね.

    • 宇宙行きたいですねー.お金さえあれば宇宙旅行は簡単になりそうですよ.宇宙に言った感想とかブログに載せられるように頑張ります.

  20. ミスりました,すいません.
    本当はサイパンの記事に投稿する積もりだったのですが…

  21. 中部地方に住んでいる高2です。
    中村さんのブログは楽しく読ませてもらっています。

    自分も航空宇宙工学に興味があり、将来はそういった大学に進学したいと思っています。今、志望を決めている最中です。

    そこで中村さんにお尋ねしたいことがあるのですが、中村さんは三重県出身だと聞きましたが、出身地を遠く離れてまで東北大を選んだ理由はどのようなものだったのでしょうか?
    やはりウインドノーツですか?
    それとも東北大の研究実績などでしょうか?

    また、機械航空工学科のある近隣を名大を志望しなかったのはどうしてなのでしょうか?

    お答えをいただけると幸いです。

    • うちの高校は名古屋大に30人ぐらい行く高校だったので,知り合いばっかりはつまんないかなぁと思って遠くに行きました.アメリカに来たのも多少そういう性格が原因なとこもありますし.

      名古屋大も素晴らしいと思いますよ!

Leave a Reply

Required fields are marked *.