中村拓磨 × Takuma Nakamura

へぼパイロット奮闘記.いいね!いい人生だよ!

アメリカの大学院へ行く

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先日,名古屋大で米国大学院学生会が主催する留学説明会の講演を行った.

東北大学でも講演予定だ.もし,予定の合う人は是非来て欲しい.

日程:2013年7月18日(木)
時間:16:30-18:30
場所:東北大学川内北キャンパス,マルチメディア棟6階大ホール
詳細はこちら

僕は8月から,アメリカのアトランタにあるジョージア工科大学の大学院,航空宇宙工学科に進学することになった.今回は,僕がアメリカで大学院生になるまでの過程及びそのとき何を考えていたかを,「アメリカを目指したきっかけ」「大学院入試の結果」「大学院入試を振り返る」の3章構成で書いていきたいと思う.名古屋での講演内容を考えている際に,随分と昔を振り返る時間があったので,その時に思ったことをまとめた感じだ.ちなみに,講演ではもちろん入れたが,ブログでは米国の大学院入試のシステムなどはほぼカットだ.参考になる資料なり,本なりを,文中にはっ付けておくのでそちらを参照してほしい.というか大学院の出願などに興味のある人は講演会に行こう!

アメリカを目指したきっかけ

僕が少しでもアメリカ留学を志したのはいつだろう?と振り返る.定かではないがおおよそ14歳ぐらいだ.このころの僕がどんな子供だったかというと

宇宙が好きだ!
空を飛ぶものが好きだ!
ロボットが好きだ!

といった感じであった.工作キットなどを買ってもらっては,組み立てて遊び,かっこつけてたのと,興味から「相対性理論」とか「回路入門」とか読んでた.鳥人間コンテストや高専ロボコンはお気に入りの番組だった.

こんな感じの子供が「将来何をやりたいか?」と考えたとき,最初にでてきたのが「NASAで働くこと」だった.田舎の無知な中学生にとっては,宇宙==NASA, 宇宙の仕事は全てNASAがやってると思ってた.NASAに行けば宇宙船やガンダムが作れると思った.友達と将来の話をしていて,なんとなく「NASAとかで働きたいな」と言った日から,僕はぼんやりNASAで働くことを目指し始める.

中学生ながらにネットとか本とかで調べていると,どうもNASAに行くためには大学を卒業していなければならないようだ,ということに気付く.そこで僕は大学に行こうと,ふわふわ〜っと「決心」し,どこの大学へ行けばいいのかを調べる.NASAっていうんだからいい大学じゃないといけないんだろうな〜東大とかか?などと思い,理系のすげー大学ってのはどんなとこだろうか,と調べていた.

すると,そこそこ衝撃の事実を知る.世界ランク上位校がほぼアメリカ独占状態なのだ.ハーバードやマサチューセッツなどとよく分からないが聞き慣れた大学が並んでいる.そこで僕は,アメリカの大学ってのはすげーんだろうなぁ,と思い,アメリカの大学へ行くことを一つの目標とした.

少し時間が経つ.なんとなくアメリカの大学へ行きたいなぁ,と頭によぎらせながら僕は高校生になった.高校生前半の頃,具体的にいつとは覚えていないが,再び僕はそこそこ衝撃の事実を知る.

アメリカの大学の学費が異常に高いのだ.

年間300万円,400万円が普通.やばい大学は600万を越えてくる.
下のリンクは,アメリカの工学部のトップスクールの情報がまとめてあるサイトだが,州立大でさえも年間300万近くの費用がかかるのが分かる.私立大で言えば,スタンフォード大学などは$43,950 とあるので,1ドル100円で計算すると約440万円/年だ..
US News Best Engineering Schools

「なんだこれ?高すぎだろ?行けるわけ無いじゃん」

田舎の平平凡凡な家庭に生まれた僕は,なんとなくそこで諦めた.なるほどアメリカ人は金持ちなんだな,とか考えていたような気もする.

ところが,その数ヶ月後ぐらいに1冊の本に出会う.「超理系留学術」という本だった.

アメリカの大学院生は給料をもらって生活している.授業料をはらっていない.日本人にも十分にチャンスがある,などと言ったことが書いてあった.

学費が高過ぎて無理だと諦めたアメリカ留学だったが,大学院留学はとても現実的に見えた.僕はこの本を読んだ後から大学院でアメリカに留学することを目指し始めた.高校のころの僕の友人達は,僕が「大学院はアメリカに行く」と,ことあるごとに口にしていたのを覚えているかもしれない.

ちなみにこの本,調べてみると出版は2008年,僕が高校2年の時のようだ.だいたい高校2年のころにこの本を読んだような気がするのでナイスタイミングだったのだろう.僕の人生をそこそこ動かした1冊かもしれない..

そこから僕は大学受験を経て東北大に入り,人力飛行機製作サークルに所属し,飛行機を作り,アメリカにホームステイしたり,スイスへの海外研修に参加したり,交換留学に行ったり,ドイツでサマースクールを取ったり,パイロットになったり,国際リーダーシップフォーラムに参加したりetc. と

英語力を磨き
世界で闘うための感覚を身につけ
自分の専門分野を幅広い角度から学び

アメリカの大学院留学に向かって一直線に進んで来た!

…ようにも見える.実際はそうではなかったのだが,これは最後のまとめに関連させて話すとしよう.

とにかく,まぁ色々やってきたわけだ.いつの間にか大学の学生証はジョージア工科大で5大学目,ビザは3つ目.そんな童貞リア充っぷりを満喫しつつ,去年の秋にとうとうアメリカ大学院出願の時期を迎える.

大学院入試の結果

大学院の入試システムについてはおおよそ省略するが,もし出願システムが気になる人はこちらの資料がかなりまとまっていて読みやすいのでオススメ.留学説明会に来る予定の人も,読んでくると予習にはいい感じの内容だと思う.

一発限りのペーパーテストな日本のシステムと違い,総合力で勝負しなければならないのが少し伝わって来る.米国の大学院入試は,日本でいうと入試よりも就活に近い,とよく言われるがまさにその通りだと思う.先輩達が就活の志望理由書を書いている隣で,僕も大学院入試の志望理由書を書いていた.

で,残りの僕の出願過程は全部省略.結果のみ記述.
以下の大学に合格することができた.

ジョージア工科大学
カーネギーメロン大学
ペンシルバニア大学
パデュー大学
チューリッヒ工科大学
ローザンヌ工科大学

どの大学も,工学分野では東大と同等かそれ以上の世界のトップスクールだ.進学する大学院が無いのが怖くて,かなりの数に出願すことになったが,振り返るととてもイケてる感じでまぁまぁ満足している.

あとお金について.上でも言及したが,僕が学部ではなく,大学院での留学を目指したのはお金の理由が大きい.年間300万円の学費は,卒業するまでに1200万円.無理だ.そこで大学院留学を目指した.

では僕は本当にお金を払わずに留学することが可能になったのか?

なった.僕の場合は,最初の2年間の費用を船井情報科学振興財団という団体から支援してもらえることになった.学費全額,生活費25万/月,保険料全額,往復渡航費支給と,非常に手厚い支援を頂ける.感謝してもし尽くせないほどだ.海外の大学院を目指す人は,是非この奨学金を調べてみるべきだと思う.卒業後の制約もないので(企業の奨学金では,卒業後何年間はその企業に働くことを条件としている奨学金が多い),挑戦してみてはどうだろう.今年の募集もまもなく始まるはずだ.(2013年07月02日現在)
船井情報科学振興財団

大学院3年目以降は,研究室の教授から給料を頂くことになる予定だ.指導教官になる予定の教授からは,99.9%は大丈夫だと言われているが,まぁお金の獲得には苦労することだろう.

そして僕はめでたく8月から,アメリカの大学院生になるというわけだ.ここまでが,院試を終えるまでの話.最終章は,大学院入試を振り返り,これが自分にとってどんな影響を与えたのかを書きたいと思う.

大学院入試を振り返る

大学院受験を通して手に入れたもの,考えさせられたことは多い.

何枚もの出願書類,推薦状を書くことは,僕の英語のレベルを引き上げてくれたと確信している.共感させて,説得させて,感動させる文章を書くのは,通じればよいという英語のレベルとは全然違う.

自信にもなった.世界のトップスクールから多くの合格をもらった.入学を辞退した大学のひとつからは「もう1年分の授業料,生活費を無条件に上げるからうちにこないか?」とも言ってもらえた.こんなに誇らしいことはそうない.これから辛いことを乗り越える糧になるだろう.

あとは自分と向き合う機会.大学の出願書類には,これからどんなことがやりたいかに加え,自分の経験,抜きん出た能力,なども記述するのが一般的だ.出願書類を書きながら,
「僕はどんな人生を送って来たのか?」
「何がやれるのか?何が苦手なのか?」
「将来はどんな人間になりたいのか?」
と言ったことを,時間をかけて考える貴重な時間となった.

そして何よりも,なぜアメリカに行くのか?

という問いに対して自分なりに意見の整理ができたこと.

実は僕は,大学院試直前である去年の秋,アメリカの大学院受験をためらっていた.

上にも少し書いたが,僕は子供の頃からずっとアメリカに行きたかった.そして僕は去年アメリカへ交換留学に行った.留学先はパデュー大学.僕が大学院での進学候補にしていた航空宇宙工学分野のトップスクールだ.

そこで経験したのは,

圧倒的な資金力
優秀な学生達
世界最先端の研究

…ではなかった.お金がない研究室は学生の給料を払うのもやっと.優秀な学生もいれば,全然できない学生もいたり.日本の研究室でも普通にやれる研究をしていたり.

これを読んでいる人は「そんなの当然だろ」と思うことだろう.例えば,東大だからといって,みんながずば抜けて優秀なわけでもない.国から一番お金をもらってるから,東大の全ての研究室がリッチなわけではない.全ての研究が日本一なわけではない.そんなことは普通に考えて当然だ.その理屈でいけば,アメリカが全てにおいて世界一でないことは,言われるまでもないこと.

しかし当時の僕にはショックだった.子供のころから憧れてきたアメリカの大学.世界のトップ達が集まる環境.僕は10年近く,「アメリカは無敵だ」「アメリカは世界最先端だ」と思い続けて生きてきた.異常に偏った人間が生まれるのも仕方ない.何か一つでも日本の方が優秀だと,それだけで僕にはとても残念だった.

そしてドイツで働き,日本の研究室にも所属した.どちらもとてもいい研究室だった.アメリカでも見なかった本当に優秀な先輩にも出会った.むしろ日本の方が学生のレベル高いんじゃないのかとさえ思った.

レベルが高いから,優秀な人が集まるから,世界最先端だから.と言った理由だけでアメリカへ行こうと突っ走って来た僕は,何か大きな目標を失った気分だった.

では,なぜアメリカに行くのか?

”アメリカに居たころの方がなんとなく楽しかった気がしたから”

これが僕の答えだと思う.

結局のところ,アメリカの方がいいとか,日本の方がいいとかは,論理的に正しい答えの出る問いではないと思う.大学によってシステムは違う.研究室によって研究のレベルも,制度も,教授の教育に対する姿勢も違う.「アメリカ」とひとくくりに言っても,街によって食事も治安も法律も違う.

こんなの全部ひっくるめて考えて,それでもなおアメリカの方が絶対にいい,日本の方が絶対にいいなどと,論理的に答えが出るとは思わない.

で,僕は結局

”アメリカに居たころの方がなんとなく楽しかった気がしたから”

をアメリカへ行く答えとしてみた.論理的に正しい正解がでないなら本能に従おうと.なんとなくアメリカの方が楽しかったんだからそれでいいじゃないかと.

ここまで読んでくれたのに最後の答えが「なんとなく」とか「本能」とか落ちの無い上に参考にならないもので申し訳ないが,僕にとってはそこそこ大きな問いに対する答えだった.

あと最後に,僕のアメリカ行きにとどめを差したものを書いておきたい.

(CREDIT: MarsScientific.com and Clay Center Observatory)

4月29日に,Virgin GalacticのSpaceShipTwoがロケットエンジンに点火してフライトを行った.実は,僕はとても前からこのフライトを待っていた.ざっくり言うとこれは民間の会社による宇宙旅行のための宇宙船だ.

40年以上も前に人類は宇宙に行き,今では定期的に国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送り込む.人を宇宙に送るのは珍しいことではなくなった.ただ,民間の会社が人を宇宙に連れて行くなどとは,10年ほど前まで誰も実現すると思ってなかった.費用がかかり過ぎた.単純に難し過ぎた.

それが,2004年にScale Composite社のSpaceShipOneが人を乗せて宇宙へ行った.SpaceShipTwoは今年中に宇宙への定期便を開始させる予定らしい.民間の会社のくせになんともとんでもないことだ.

こんなふざけたことができるのも,アメリカだからなのかもしれない.

「はは,アメリカやべぇ,かっけぇ」

そんなわくわく感が,僕が海を渡る理由なんだろう.そして,SpaceShipTwoが飛んだのは僕の合格通知の直後だった.アメリカに呼ばれてる気がした.これがアメリカ行きの決心をした瞬間である.

こうして僕は,14歳のころとは大きく違うモチベーションを持ち,当時夢描いたのと同じような道を目指してアメリカの大学院へ行くというわけだ..

これで今回のブログは終わり.長かったのに読んでくれてどうもありがとう.ここまで読んでくれた人の中には,留学や海外で働くことに少しでも興味を持っている人が多いのではないだろうか.もしそんな人がいたら是非尋ねたい.

君は,何を目指して海を渡る?

(ポスターデザイン:長野光希)

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