中村拓磨 × Takuma Nakamura

へぼパイロット奮闘記.いいね!いい人生だよ!

インターンと人生ゲームの難易度

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アメリカで5年間博士課程の学生をやっていて,日本人に驚かれる2大ネタは「博士課程の学生は給料をもらっている」と「夏休みはインターンにいって稼いでいる」だったかなと思う.前者はこのブログのネタにしたことがあるので今回はインターンについて.

去年の夏,テック企業へインターンに行ったのでそのことを中心に僕の意見を書く.この文章の内容は基本的にエンジニアリングのインターンについてである.他の分野の人のインターンは随分と事情が違うことも承知なので,そのつもりで読んでほしい.


ちなみにこれはグーグルでインターンをする中年男性の映画.多くのシーンは僕の通うジョージア工科大学で撮影された.ツッコミどころ満載だが,フルタイムの採用を目指してインターンを頑張るところは現実も同じである.

インターンについて

アメリカにおけるインターンは,学生を雇うという点を除けば基本的には普通の雇用である.雇われる期間が短いという点も大抵真実だと思う.(ただ,アメリカの雇用はフルタイムと言えど日本のように終身雇用ではない.“Hire at Will”,“Fire at Will”と言われるように理由なく解雇できるのが一般的.インターンの方が短いとは言えないかもしれない.転職も早いし.)一般的にインターンは夏の間に行われる(12−14週間)が,春や秋セメスターの間,あるいは通年で行われることもある.短期間の雇用なので関わるプロジェクトは短期間で完結するものが多い.学生ビザ(F1)で来ている留学生はCPTやOPTといった労働許可を申請する必要がある.基本的にはインターン先からもらったオファーレターさえあればすんなり許可が出る.OPTでインターンする場合はCPTよりも申請に時間がかかるらしい.僕はCPTでのインターン.先ほど“普通の雇用”と言った通り,インターンの仕事には給料が出る.プロフィットシェアや他のベネフィットがもらえる場合も多い.給料の額は,卒業したらもらえるであろう額の半分から75%ぐらいだろうか.僕の観測域での感覚では,エンジニアリングの博士課程の学生なら月$5,000(月55万円ぐらい?)以上はもらえる.インターンの給料は調べると山ほどでてくるが,こちらの記事で例えばFacebookは給料$8,000/月と家賃$1,000/月と書いてある.

なぜインターンに行くかの理由は色々あることだろう.インターンの多くはフルタイムの採用につながっている.就職したい企業のインターンに行き,良い業績を出してフルタイム職にありつくことを目標にする人もいるだろう.また,インターン中の給料は大学院生の給料よりかなりいい.インターン中に貯金して残りの期間の学費や生活費を払う人もいる.役に立つスキルを身に着けたい,レジュメに職歴を書きたい,大学でできない研究がしたいといったモチベーションの人もいるだろう.僕の周りを見る限り卒業直前,あるいは卒業1,2年前にインターンするケースが多い気がする.理由の1つは先ほど言った通り就職に直結しているからだろうか.インターンは既に就活であり,インターンを得ることで事実上就活が終わる場合もよくある.2つ目の理由はスキルの問題だろうか.卒業の近い学生の方が即戦力になる可能性が高く,企業側が採りたかったりするのでは?あと卒業の迫った学生の方がそのまま就職してくれる可能性も高いし企業には魅力だろう.インターンは学生にとっても就活の一環だが,企業にとっても採用の一環なのだ.

よかった教科書.通称TLE本?僕のようなCSが本職じゃない博士の就職はこれぐらいできれば割と困らないんじゃないかと勝手に思ってる.

よかった教科書.通称TLE本?僕のようなCSが本職じゃない博士の就職に関してだけさえ言えばこれぐらいできれば割と困らないんじゃないかと勝手に思ってる.

インターンの採用の面接はフルタイムの採用面接の短い版だと考えている.僕はフルタイムの面接も何社か受けたが,フルタイムの面接の場合,何度かの電話面接の後に会社へ招かれて最終面接をする.インターンの場合,その最後のオンサイト面接の代わりに3ヶ月間雇ってあげて,フルタイム採用するかどうか決める,っと言ったところか.電話面接では以前のブログに書いたクオルの簡単版みたいな試験を電話でやるところが多いかと思う.加えて,プログラミングの能力を審査するコーディングインタビューというものもよくある.僕はコーディングインタビューというものの経験がなかったので少し対策した.オススメの対策本は「プログラミングコンテスト攻略のためのアルゴリズムとデータ構造」というやたら長いタイトルの本.ただ,博士課程の学生はプログラミングがめちゃくちゃできてもそれだけで採用されることはなく,数学や研究力の方が評価されると思う.一方,プログラミングができないとそれだけで落とされることが多い.足切り的なものだと理解している.教科書はアマゾンで買える;リンクはこちら.

余談

インターンの期間中はオフィス近くの大学の学生寮を用意してもらい,他のインターン仲間達と暮らした.大学の中でしか使えないデビットカードが支給され,食事や洗濯に使った.インターン最終日まで余ったお金は大学キャンパス内で日用品を大量に購入し,スーツケースの限界まで詰め込んだ.それでもまだ余ったお金はインスタント食品を買って食料寄付の缶に突っ込んだ.僕の他の何百人というインターンがほぼ同じ行動に出たため,寮の近くのコンビニから石鹸,シャンプー,コンドーム,歯ブラシ,usbメモリ,カップラーメン,クッキー,ありとあらゆるものが消滅するという珍事が起こった.地元の学生にめっちゃ嫌われそうだな,っと思った.

人生ゲームの難易度を知る

僕はなぜインターンに行くことにしたか.消極的でない風に述べれば自分の能力を試してみたかったからだ.優秀な人間のいそうな環境に身をおいて頑張ってみたかった.あと,今の研究室の方針に疑問を持ったのもある.うちの研究室はかなり古いシステムをずっと使っているし,研究のテーマも10年ぐらい前から似た感じで,他のところはどういうシステムでドローンを飛ばして,どういう研究をしているのか見てみたかった.というわけでドローンをやってて優秀そうな人がいると思った企業幾つかにインターンを申し込んでみた.だが,そんなのは建設的っぽい理由に仕立てただけで,あまり当時の本心を表現している感じではない.本心は「自分の力がどれぐらいあるか試したい」などという挑戦的で前向きな感じよりは「あれ?僕って本当にアメリカで食っていけるんですかね,この先??」みたいな不安な感じだった.不安故に,いざ卒業してしまって路頭に迷う前に自分が本当にアメリカで生きていけるのかを試してみたかった.こういう発想に至ったのも,お金や仕事に関しての疲弊が多すぎたからな気がする.僕の在籍中,研究室の経済状況は決してよくなかった.今季の給料が出るか出ないかも学費支払い締切りの数日前まで分からない,というのがザラ.いくらもらえるかも,いつまでもらえるかも,誰が払ってくれるのかも不明.そんな訳だから次の仕事内容も不明.すなわち今後の研究の方針も不明.そしてそんな中,指導教官は別の大学に引きぬかれ研究だけでなく研究室もなくなった.

僕は永住権が手に入るまでアメリカの企業で働いて,永住権がつけばSpaceXやNASAなどの航空宇宙系のとこで働きたいと考えていたが「あれ?そもそも,それまでアメリカに居れる前提が怪しくないか?」と思い始めていた.先行きの怪しい学生生活.永住権/市民権がないと基本的に門前払いの航空宇宙系.おまけにうちの研究室を卒業して,アメリカで企業に就職した留学生はゼロだ.ひとまずどこかのインターンがもらえるかもらえないかで,この先の人生ゲームの難易度を測ろうとしたわけだ.もしもインターンがもらえてなかったら日本への就職も考え始めていたことだろう.

このブログを書いている現在は,インターンどころかフルタイムの就活も終わり,まぁアメリカでも生きていけそうだな,っと思っている.うちの研究室初の外国人の企業就職である.(そして研究室が消えたので最初で最後である.)永住権すら持っていない航空宇宙工学の人間には,アメリカでそんなに就職先の選択肢がない.そんな中で,テック系の企業が僕の分野に入ってきてくれるのは結構運の良いことだと思う.数年前のアメリカでドローンをやっていたら本当に行くところがなかった.そんな後押しもあって,最近は僕のアメリカンドリームの難易度も言うほど糞じゃないのかもしれないと考えている.

10 Comments

  1. 人生はまさに運とタイミングですね
    中村さんは時代の流れにうまく乗れる才能があるようで羨ましい限りです。
    寧ろ時代が俺に合わせているのだと豪語できる日が私に来るのか悶々としながら日々実験しているM2です

    • 僕が今のラボに来た時はグーグルやアマゾンもドローンやってなかったですし,完全に運です.でもありがとうございます.お互い頑張りましょう.

  2. こんばんは!
    ブログ更新待ってました!
    拓磨さんと全く接点はないですが、モチベーションになります!

    永遠の14歳、熱いブログ待ってます!

  3. ずっとブログを読んでいます 更新を楽しみにしていました アメリカでの日本とは異なる社会の仕組み、中村さんの人生への考え方など一つひとつの情報が刺激的で参考になります 健康には気を付けてがんばってください

    • コメントありがとうございます!卒業したらもうちょっと頻繁に書いていきたいなって思っています!

  4. 僕はアメリカに住んでる高校生で来年東北大学の進学を目指している者なんですが、拓磨さんの生き方に憧れています!アメリカのテクノロジーに憧れたり英語で苦労したり共通点が多いと思うんですけど、壁をうまく乗り越えていく拓磨さんのブログを見てると僕も頑張ろうと思います!これからも頑張ってください!

    • 高校生で留学ですか.素晴らしいですね.仙台も東北大学もとても楽しいところなので是非頑張って下さい.僕も頑張ります.

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